すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -178/197page
の国のためにいっしょうけんめい尽(つ)くすことです。このことを誓約書(せいやくしょ)に書いてください。」
何を言われるのかと心配していた健次郎の顔は、感激とうれしさに紅潮(こうちょう)した。
「私も、夫人と同じ考えで日本からはるばるやってきました。きっとお約束します。本当にありがとうございます。きっと、ご期待にそうよういっしょうけんめい勉強に励(はげ)みます。」
健次郎の目には、感謝の涙が光っていた。
健次郎は、今までよりいっそう大学での勉学に全カを傾(かたむ)けた。この間にも、日本からは何度も帰国(きこく)命令が来た。これをことわり続け一年半が過ぎた。ついに卒業である。バチェラー・オブ・フィロソフィーの学位を受け、明治八年(1885)五月、二十二歳になった健次郎は、四年半ぶりになっかしい日本の土を踏(ふ)んだ。十五歳のとき、お坊さんに連れられて会津をぬけ出してから、七年