すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -044/203page
大川がはんらんするたびに、幕内(まくのうち)では、田畑(たはた)や家が流され、ひどいときには、おぼれて死ぬ人さえありました。
吉十郎(きちじゅうろう)は、老人たちから、洪水(こうずい)の話をよく聞かされました。特に、あの「白(しら)ひげの水」については、よほど恐しかったのか、何回も聞かされました。
<ある年、白いひげをはやした老人が、村から村へまわりながら「来年は大洪水になるぞ。大水(おおみず)、大水、大洪水(だいこうずい)。」とさけんでいたのさ。次の年になったら、本当に大洪水になってな、会津は一面、沼(ぬま)みたいになったんだ。逃げまわる人々が、川の方をみると、あの白いひげの老人が、丸木舟(まるきぶね)に乗って、川下(かわしも)の方に、くださっていくのが見えたのさ。>
文禄(ぶんろく)五年(1536年)の白ひげの水につづいて、太郎水(たろうみず)、吉十郎の二歳のときには、次郎水(じろうみず)、五歳のときの三郎水(さぶろうみず)と、幕内は、いつも、大川のはんらんによる水の害(がい)をうけてきたのでした。