すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -061/203page
「それは、何だね。」
「実は、今まで調べてきた農業のことを、本にして書き残しておきたいと思うのですが。調べたことだけではなく、ためしてみたことも、昔からのいい伝えや、お年寄りから聞いたことなどもまとめて、一さつの本にして、子孫(しそん)に書き残しておきたいのです。そうすれば、この村の人々だけでなく、会津ぜんたいの村の人々に役立つと思うのです。」
「ふうん。昔から歌や物語、歴史などの本はあるが、農業の本は、聞いたことはないな。」
和尚さんは、帳面をぱらぱらとめくって、すぐれた研究に驚きました。
「おもしろい。ぜひ、やってみなさい。」
与次右衛門は、和尚さんのはげましのことばに、ふるいたつ思いがしてきました。帰り道、冬の夜空に、月がはりついたように、見おろしていました。