すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -062/203page

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そのころ、与次右衛門は、一さつの本を手に入れました。それは、昔中国の王禎(おうてい)という人が書いた 『王禎農書(おうていのうしょ)』という本です。初めてみる農業の本に感心しながら、夢中になって読んでいくと、会津の農業にはあわないところが、だんだん目につくようになりました。それに、むずかしい漢字ばかりを使った中国の文章ですから、なかなか読みとれないところもありました。

しかし、農業の本のまとめ方は、たいへん勉強になりました。

「そうだ。これを参考にして、だれにでもわかることばで、この会津の土地にあった農業のやり方を、書き残すことのできるのは、自分しかいない。自分がやらなければ、だれもできないのだ。」

与次右衛門は、こう考えると、決意が強くなっていくのを感じました。

会津の片いなかで、与次右衛門が書きはじめたころ、世の中は五大将軍綱吉(つなよし)が位(くらい)につき、はなやかな元禄(げんろく)時代がやってこようとしていました。


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