すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -082/203page
方法など、もっとたくさんのことを学ばなければならないと思いました。
家老の頼み
春の終わりのものうい一日が、暮れようとしていました。道路に面した格子戸(こうしど)の外を、物売りの間(ま)のびした声が通り過ぎ、遊びから帰る子どもたちの、にぎやかな笑い声が聞こえてきました。
えんがわで、つくろい物をしていた妻のれんは、その声に驚いて顔をあげると、夕日が西に傾(かたむ)きかけていました。
「夫(おっと)はどうしたのだろう。」
ふと不安な気持ちにおそわれました。家老の西郷頼母(さいごうたのも)によばれて、夫(おっと)の豊助が家を出たのは昼(ひる)前でした。