すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -083/203page

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立ち上がったれんが、えん先の南天(なんてん)の葉越しに鶴ヶ城をながめているとき、

「帰ったぞ。」

うしろの格子戸があいて、四十三歳になった夫の豊助のあさ黒い顔が見えました。明るい西の空を見ていたれんの目には、うす暗がりに立つ夫の姿がよく見えませんでしたが、それでも明るい顔色と自信にみちた夫の目を見つけて、ほっと安心しました。

「大変な仕事をお引き受けしてきた。」

刀をはずして、豊助は着物を着がえることもなく妻の前にすわりました。

「藩の大事業(じぎょう)をまかせられた。大工事になるぞ。」

れんの心に、また不安がわいてきました。身をかたくして、夫の顔を見あげました。

「お城の水がだんだん少なくなってな。田にひく水も足りなくなる。だから


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