すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -091/203page
それからまた数日がたちました。雪国(ゆきぐに)会津の短い夏も通り過ぎていこうとしています。夏の終わりを咲きほこっていた庭のヒマワリも、心なしか色あせてきたようです。豊助は書類にかこまれたまま、この数か月間のことをふりかえっていました。
けさがた、西郷頼母によばれて登城(とじょう)すると、三家老のいる席で、『戸の口用水路修理計画書』が殿様から許可されたことを聞かされました。それに豊助は、涯味寿長(がいみとしなが)、鈴木泰俊(やすとし)、相田啓迪(あいだひろみち)、沢井次房(さわいつぎふさ)の四人とともに、工事奉行(ぶぎょう)を命ぜられ、現場監督(げんばかんとく)に八田宗吉(はったそうきち)、古川伊喜右衛門(ふるかわいきえもん)があたることになったことを伝えられました。
ぽっと、まわりが明るくなったので、気がつくと、あんどんの火をともした妻のれんが、うしろにすわってました。豊助は、妻とむき合うと静かに語りはじめました。