すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -098/203page
じめたという知らせを伝えました。驚いた豊助は現場にかけつけました。ぬかるみをふみながらたどりついた現場(げんば)には、宗吉がぼうぜんと立ちすくんでいました。目の前には、去年(きょねん)の秋、みぞれの吹きつける中でかじかむ手に息をかけながら、ようやく築(きず)きあげた土手(どて)がめちゃめちゃにくずれおちています。雪どけ水が音を立てて、その土や砂を下流におし流してしまいました。
「藩の金を無駄(むだ)に使って何たるざまだ。」
「計算が少しうまいからといって得意(とくい)になっているから、ばちがあたったのさ。身のほども知らぬやつだよ。」
事故の知らせは、たちまち若松の町中に広がり、豊助を非難(ひなん)する声がまき起こりました。近所の人たちでさえ、豊助の家の者とつき合わなくなり、親しい人も町で会(あ)うと顔をそむけてしまうようになりました。