すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -108/203page
えてきて豊助は立ちどまりました。目の前で働く人夫のものとはちがった物音です。
「おい、向こう側ののみの音が聞こえるぞ。」
一瞬(いっしゅん)、人夫たちの仕事がとまりました。カーン、カーンと聞こえる音は、たしかに目の前の岩壁(いわかべ)の向こう側から聞こえます。
「もうすぐだ、がんばれ。」
豊助の声と共に、人夫たちはいっせいに岩壁にとびつきました。豊助は、興奮(こうふん)のあまり、足もとがふるえるようでした。掘りぬかれたわきの岩壁に片手をついて、からだをささえるようにしてようやく立っていました。土の冷(つめ)たさが、片手を通してからだ全体を伝わり、ようやくふるえがとまったと思ったとき、人夫の1人のふるったのみが、空(くう)を切るように岩壁の中にすいこまれました。
「やったあ。」