すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -113/203page
「ありがとうございました。しあわせでした。」
のひと言(こと)を残して亡(な)くなりました。れんの1周忌(しゅうき)をすませたころから、豊助は、だんだん元気をなくしてきました。きょうの見まわりも部下にまかせて、豊助はひとり、御用部屋(ごようべや)の柱にもたれていたのでした。
うっとうしい気分をふりはらうように、豊助は磁石(じしゃく)と書類をもって立ちあがりました。かげったかと思うと、またさっと日がさして、お城の木々の若葉がきらきらとかがやき出します。
若葉の明るさに思わず目をそらして上をむいたとたん、豊助は、天守閣が頭の上から、のしかかってくるように感じました。豊助はたおれました。豊助はからだの中を用水路の水がさらさらと流れていくように感じ、そのまま気が遠くなっていきました。