すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -124/203page
で、だれも助けてくれるような人は通りません。しかたなく、はうようにして歩き出しました。途中で何度も休みながら、ようやく小池(こいけ)までたどりつきましたが、もう1歩も歩けません。人に頼んで馬にのせてもらい、やっとのことで家に帰りつきました。
伊策(いさく)の姿をみた祖父はびっくりして、
「ほら、伊策、しっかりしろ。十五夜さまにあげたいもをすってきたぞ。」
と、伊策の傷(きず)に薬をつけてくれました。酢(す)でといたらしく、そのすっぱいにおいをかいでいるうちに、伊策はまた気を失ってしまいました。ぼうっと気持ちが遠のいていくうちに、伊策は夢を見ました。
そこは、自分がたおれていたがけの下のようでした。川の、ごうごうという水音にまじって、何やら、じゅもんのようなことばが聞こえます。よく見ると、岩のかべにはりついたように、まっ白な髪(かみ)の老人がいます。