すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -128/203page

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 兄に教えてもらったそろばんのうち、たいへんだったのは割(わ)り算(ざん)のやり方でした。そのころ、そろばんで割り算をするには、特別の 「割り算九九」 を覚えなければなりませんでした。「2 1 天作(にいちてんさく)の5(ご)、2進(にしん)の1 10(いちじゅう)……」 という、たいへん覚えにくい九九です。これが、3の段、4の段と進み、7の段、8の段くらいになると、さらにむずかしくなって、なかなか覚えられません。伊策は、学校では何回も賞状をもらうほどすぐれた成績をあげましたが、その伊策でさえ、この「割り算九九」を覚えるのはたいへんでした。

 学校から帰ってから、伊策は家の手伝いをしなければなりません。水くみやふろたき、それに畑の草とりや馬の手入れなど、子どもでもできる仕事はたくさんありました。そして、タ食後、いろりばたでの家族そろっての楽しい話しあい―それで1日が終わるのですが、そこで兄がそろばんを持ってくると、伊策の頭に 「2 1 天作の5」がうかんで、泣きだしたくなりました。


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