すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -177/203page

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ゆとりもでてきました。

 何の用事があるのか、小走りに走っていく人、太いステッキをかかえこむようにして人力車を急がせる人――――忙しくさわがしい町のざわめきの中で、四郎の心はだんだんと静まり返っていきました。突然、うしろの方で、大きな汽笛が鳴りました。昨年(さくねん)、宇都宮(うつのみや)まで開通した汽車が、上野駅(うえのえき)を出発したのでしょう。

 万世橋(まんせいばし)を渡りながら下を見ると、神田川(かんだがわ)の水が静かに流れていました。午前の明かるい太陽が、ときどき、水にきらさらと輝いては、また流されていきました。

「そうだ。流れにさからってはいけない。流れに従う。たおそう、たおそうというあせりの心をおさえるのだ。そうだ、自分にかつのだ。」

 なつかしいおじいさんのやさしい目と、嘉納治五郎のきびしくするどい目を


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