北会津村の文化財第23集 -004/027page

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にいくことをする。そのうち、機が熟すると、むかい合っていた雄が、 巣入りを誘うように泳ぎだすと、雌は雄の背面後方に、サッと近寄り、 尾をピソと上にそらすようにして、こきざみに体を左右に振りながらつ いて泳いでいく。このようなジグザグダンス泳ぎを何度かした後、雄は 巣の入口に誘いこみ、体を横に倒しながら、頭で巣穴を開げるようにし て雌の巣入りを助ける。
 雌は、巣から尾を出すようにしてもぐりこみ、雄に尾柄部を突ついて もらって産卵をする。卵を産み終えた雌は、巣から抜け出ていき、卵の 世話を雄にまかせる。巣から出ていくのを待っていた雄は、すぐ巣にも ぐっていき卵にしらこをかけて受精する。
 なわばりの中に熟した雌がおれば、2〜3尾を巣に誘って産卵させる。
 イトヨの卵は、受精後まもなく発生をはじめる。それにともない、卵 は多くの酸素を必要になってくる。必要酸素量は、発生の進行とともに 増大する。雄はこれに対して、卵に新鮮な水(酸素)を大きな胸びれで あおぐようにして送りこむ、いわゆる換水行動(ファンニング・水あお ぎ) を行い、卵が酸素不足にならないようにしている。
 このような水あおぎ運動で、それによって生ずる後退力と前進力のふ らつきを、尾びれなどをバランスよく動かして体をピタリと一点に保持 して換水機能を果たしている。
 イトヨの卵は、球形で、直径1.5ミリ程度で、卵黄は黄色半透明で ある。沈性卵で、付着性があり塊となっている。受精卵は硬い。産卵後 7日目ほどの卵は、眼球も黒くなって心臓の動きもよくわかり、血液の 循環が認められ、胸びれらしきものがみえてくる。
 大きな胸びれで水流を送りこむ時間は、卵の成長、発育とともに長く なってくる。卵は水温18度Cで、10日後にふ化するが、そのころからファ ンニング行動はなくなってくる。
 ふ化したばかりのイトヨには、トゲウオらしい棘のひれは、まだでき ていない。大きな卵黄がめだち、全長5.5ミリくらいである。そのよ うな仔魚は、まだ泳げず巣材に乗るようにして、ときどきビョーンと跳 ねるような泳ぎ?をする。卵黄は、ふ化後五日目ほどで吸収され、あご が発達してロが開閉するようになる。
 ふ化後七日間ほどは、巣にとどまって雄親に守られてすごす。卵黄が なくなった仔魚は巣のまわりに散らばるが、遠くにはなれそうになると、 雄親が追いかけて仔魚をロにふくんできて、巣にバッともどすことをす る。
 全長13.5ミリメートルで背棘三本がそろうが、体側の鱗板はまだ発 生していない。
全長15ミリメートルほどになると、鱗板が頭部に近い背棘1〜2本の下 に5枚と、尾びれに近いほうにも3枚発生し、成魚に近い形態をした稚 魚となる。やがて30ミリメートルくらいに成長すると、鱗板が連続して 33枚〜35枚が出そろってくる。
 背棘などは、ひれが変形したもので、ふだんは倒しておくが、なわば りを守る時・争いの時・あくび?の時などは、とげを立てて相手にむかっ ていく。
 育ち方は、水温・生息場所・食物の量などによって大きく変化するが、 会津のイトヨ稚魚は、翌年の春までに全長5〜7セソチメートルの大き さに成長し、成熟して営巣・産卵をする。
 棘をもつイトヨを襲うものには、コサギ・アオサギなどがいる。また カワセミが枝にとまって水中をうかがっていることもある。ウグイがイ トヨをロにふくんだまま弱々しく泳いでいるのを観察したが、棘が口に ささってえさを食べられなくなったのだろう。ゲンゴロウなど甲虫は、 イトヨなどの小魚やオタマジャクシ・昆虫を食べる。ヤゴも小魚やオタ マジャクシを食べるが、下唇を伸ばしてイトヨも捕食しているものと思 う。アメンボが、弱っているイトヨや死んだイトヨに群がって食いつい


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