北会津の昔ばなしと伝説 -002/238page
とにしただど。
そこで、そのおやじさんは、
「私はこれから、下の村まで出掛(でか)けて来るので、囲炉裏(いろり)で火をたいて暖(あたた)まって行ってくんつぇ。」
と言って、出掛(でか)けて行っただど。
旅人は、うす暗い明りと囲炉裏(いろり)の火の燃(も)えるのを見つめながら、一人淋(さび)しく待っていただど。
ふと、家の中を見渡したら、奥の方にボーとわずかな明りが見えただど。
息をころしてじっと目を見据(みす)えたら、時々か細い腕(うで)が出てきて、何か物を取っているようなんだど。
取っては引っ込め、取っては引っ込めしているんだど。
何だか気味が悪くなってきただど。