北会津の昔ばなしと伝説 -003/238page

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そうこうしているうちに、真っ暗な台所の隅(すみ)の方で、異様(いよう)な泣き声が聞こえてきただど。それは、泣き声というよりも(注1)きてえな声だっただど。

 ますます気味が悪く体が固(かた)くなっただど。
旅人は、奥の方を見ねえようにして、そのきてえな声も聞かねえようにして囲炉裏(いろり)の火を燃やしながら、震(ふる)える体を暖(あたた)めようとしていただど。

 そのうち囲炉裏端(いろりばた)のかぎ殿に掛(か)かっている鉄瓶(てつびん)の湯が煮だってきただど。

 その鉄瓶(てつびん)の中を、目をこらして見てみたら、何か異様(いよう)なものが 「ポコー」と浮き上がったり、沈(しず)んだりしてただど。

 旅人は、ますます気味が悪くなって、おっかな

挿絵 旅人のおっかねえ一晩


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