北会津の昔ばなしと伝説 -004/238page
くって、おっかなくって、仕方がなかっただど。
「早くおやじさんが帰って来ねーがな。」
と気が気ではなかっただど。
そうこうしているうちに、やっとおやじさんが帰ってきただど。
「いやー。大変お待たせしやした。」
と言っただど。
旅人は、おやじさんがいない間(あいだ)、気持ち悪かったことの一部始終(いちぶしじゅう)を話したら、おやじさんは、
「おれも急いでいたもんで、おめえさまに黙(だま)って行っちまって申し訳なかった。」
と言って、語り始めただど。
「奥の部屋には、まだ小さな娘(むすめ)を寝かせておいただ。枕元(まくらもと)にお菓子やらみかんやらをおいたので、それを取って食べてたんだべ。囲炉裏(いろり)の鉄瓶(てつびん)の中には女房(かが)の病気に猿の頭を煎(せん)じて飲ませれば、よく効(き)くと言われたので人に頼んで、頭を取ってもらって、それを入っち