北会津の昔ばなしと伝説 -005/238page
おいたんだげんじょ、それを飲む前に女房(かが)が亡くなっちまった。せっかく煎(せん)じたのに、役ただねがった。それで医者を頼みに下の村まで行ってきたんだ。」
と言っただど。
そうしてもう一つは、
「恥(は)ずかしいことだげんじょ、おれには、気のふれた娘(むすめ)がいで、どうにもならず台所の隅(すみ)の檻(おり)に入れておいただ。それで時々奇妙(きみょう)な声をはりあげんだ。」
と言っておやじさんは、涙ながらに語っただど。
旅人は、
「そうがよ。気の毒(どく)な事だ。それを聞いてわかりやした。」
と言って一晩(ひとばん)泊めてもらっただど。
注1・・・きみょうな声