北会津の昔ばなしと伝説 -006/238page
2 おふじさん
むかし、むかし、あったどよ。
おらが村に鎌沼(かまぬま)っつう大きな沼があっただど。
そのあたり一面ヤプが生い茂りその処々(ところどころ)に、大きなハンの木が空を覆(おお)い、昼でも薄暗(うすくら)いほどで、無気味(ぶきみ)な場所だっただど。
その辺一帯(へんいったい)は、水がわいてじめじめしてでな、すこし下(しも)になると小堀(こぼり)になって外村(ほかむら)の用水となっていたんだど。
この沼に恐(おそ)ろしい「主(ぬし)」が住んでいたんだど。
毎年、六月頃(ころ)になると、村の十五、六歳位の奇麗(きれい)な娘をな、人身御供(ひとみごくう)に差し出さないと「主(ぬし)」 が大暴(おおあば)れして、村人はとても困(こま)っていたんだど。
泣きながら我が身を切る思いで、差し出していたんだど。