北会津の昔ばなしと伝説 -007/238page
今年もまた、その季節になり、二人集まると、こっちでもあっちでもその話で、心配して泣くばかりで、何の方法もねえだど。
今年は、誰(だれ)の娘に白羽の矢が立つのやら、寝(ね)ても眠(ねむ)られぬ毎日だっただど。
そんなある日、おやがっつぁまの三番娘(むすめ)で、年は十六、奇麗(きれい)で心優(こころやさ)しくみんなから可愛(かわい)がられているおふじという娘が、
「私が、人身御供(ひとみごくう)になんべ。」
と言い出したんだど。
親兄弟も大変驚(たいへんおどろ)いたが、おやがっつぁまは、涙をのんで、
「事が済むだどな。」
と言っただど。