北会津の昔ばなしと伝説 -008/238page
しかし、村の人達は口を揃(そろ)えて可哀相(かわいそう)と泣くばかりだっただど。
そうこうしているうちに、その日が来てな、みんな涙のうちに、奇麗(きれい)な花嫁姿(はなよめすがた)に着飾(きかざ)って、なおいっそう美しくなった姿で、
「みなさん、お別れだね。お元気でなし。」
と言っただど。
そんじな、村人は、鎌沼(かまぬま)に向って送っただど。
天気は良かったが、一天(いってん)にわかに雷鳴(らいめい)轟(とどろ)き、天裂(てんさ)け雨こぼれる如(ごと)く嵐の音の中におふじさんの姿は無くなっていただど。
親兄弟はもとより、村人は泣く泣く家に帰っただど。
それから、四、五日たっての昼下がり、南西の空がひときわ明るくなっただど。
村人は、何だべと見たれば、空から前よりいっそう美しくなったおふじさんがたくさんの宝物(たからもの)を持って舞(ま)い降りてきたんだど。