北会津の昔ばなしと伝説 -014/238page
「ケン、ケーン。」
といったど思ったら、ニシンの束といっしょに消えでいなぐなってしまっただど。
じいさまは、ほろよい気分もどごがに吹っ飛んで、しょんぼり家に帰ってきたど。
ばあさまが、戸口(とぐち)で待ってで、
「お帰(かえ)んなんしょ、何だって遅(おそ)がったなし。
と言うど、じいさま、帰り道のことを話したど。
「それは、難儀(なんぎ)なごとだったなし。明日は赤飯(せきはん)でも炊(た)いでお稲荷様(おいなりさま)に、あげんべし。」
と言っただど。
じいさまは、今度からもっきりなのひっかげねえで、早く帰ってくんべど思ったど。
注1・・・ますに酒をなみなみ注(つ)いだもの