北会津の昔ばなしと伝説 -018/238page
重(おも)でい足を引きずって、少し小高(こだか)い松林(まつばやし)のところへ来たら、すうっと体が軽くなったっつうだな。
すると、こんな声が聞こえたど。
「私は、なかっつぁま稲荷(いなり)だ。ここに祀(まつ)って4月17日を縁日(えんにち)にするように。」
小川某(なにがし)という人が振り返ると、うしろに侍の若衆姿(わかしゅうすがた)の小男が立っていただど。
小川某(なにがし)は、夢から覚めたように、吾(われ)に帰ると、腰がぬけたかと思うほどたまげて、ころびまろびつ帰ってきたそうだ。
口も利(き)けないほど顔色がなかったつうが、水を一口飲んで気を落(お)ちつかせ、たった今の不思議な出来事を家の中でしゃべったど。
家の者たちも、
「信じられない薄気味悪(うすきみわる)そうな話では、あっけんじょも、昔から霊験(れいけん)あらたかななかっつぁま稲荷(いなり)のことだから、そうしたこともあり得ることだんべ。」