北会津の昔ばなしと伝説 -043/238page
と舌(した)うちしながら、
「御用(ごよう)。御用(ごよう)。」
と近寄(ちかよ)っていったら、なんと盗人(ぬすっと)はどこにも見当たらず、ただ見えるものは、高さが五尺、幅が二尺ばかりの石がたってあっただど。
役人は、あぜんとして、
「ああ、これは、だめだ。」
とぶつぶつ言いながら、いずこともなく、立ち去っていってしまっただど。
それからというものは、この村堺(むらざかい)に立っている石を誰(だれ)言うとはなしに、盗人石(ぬすっといし)と呼ぶようになっただど。