北会津の昔ばなしと伝説 -056/238page
吉平(きちへい)ほうほうの身(てい)で逃(に)げで帰っただど。
また、ある時、坂下(ばんげ)の町はずれの一杯(いっぱい)飲み屋でもっきりひっかげでいだら、隣(となり)で飲んでいだじいさまの財布(さいふ)の中身がふくらんでいるのに目をつけただど。
吉平(きちへい)いつもの悪知恵(わるぢえ)出して、
「じいさま、一杯(いっぱい)飲まんしょ。これは、おれのおごりだから。」
と言って飲ませているうちに、じいさまベロンベロンに酔(よ)っ払(ぱら)ってしまっただど。
「これは、しめた。」
と思った吉平(きちへい)は、ソーッと財布をじいさまのふところから抜き取って、帰る途中に財布(さいふ)の中の銭(ぜに)だけ盗(と)って空(から)の財布(さいふ)を鶴沼川(つるぬまがわ)に投げて帰っただど。
次の日、じいさま我に返ってよくよく考えてみたら、財布(さいふ)が無くなっているのに気がついて、
「これは、大変だ。」