北会津の昔ばなしと伝説 -073/238page

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 ある晩(ばん)おそく、トントントンと戸をたたく者(もの)がいたんでな、出てみると一人の小男(こおとこ)がいて、

 「うちのかみさんが、お産(さん)で苦しがってんだ。早く来てくんにかな。」

っていたんだど。

 気がるなお医者さまはな、すぐかごに乗って出かけてみると、向かい寺の北川(きたがわ)のあたりのひどいあばら屋だったんだど。屋根や壁はくずれかけ、すわったまま月が見えるような家だったんだど。

挿絵 藤兵衛稲荷


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