北会津の昔ばなしと伝説 -074/238page
お医者さまは、さっそく手当てをしてやってな。無事(ぶじ)に、かわいい赤ん坊をとりあげてやったんだど。
家があんまり貧乏(びんぼう)そうなので、お金をとらずにそのまま帰ろうとしたんだど。するとな、引き止められ、ごちそうを出されたんだど。
そのごちそうはな、町の一流の店の料理と変わんなかったんだど。
ところがな、その晩(ばん)、横田(よこた)町のお金持ちの家で結婚式(けっこんしき)があったんだど。けれど、用意した料理のおぜんが急に一つ足りなくなってな、台所の者(もの)がまごつくということがあったんだって。後で考え合わせてみると、北川(きたがわ)のキツネがぬすんだんだということがわかったんだど。
お百姓(ひゃくしょう)を助けた藤兵衛(とうべえ)とは、このときの恩(おん)を返そうとしたキツネだとわかってな、それで村の人々は小松(こまつ)の集落の北側に神社を造ってな、このキツネを祀(まつ)って藤兵衛稲荷(とうべえいなり)と名づけたんだど。