北会津の昔ばなしと伝説 -106/238page
婆様(ばあさま)は漸(ようや)く事の重大さに気付いて、助けを求めたそうだが、その時には、どうする事もできず、ただ見ているだけだったと。
だんだんと水かさが増してきて、婆様(ばあさま)は、骨箱とトラ猫を抱きしめて、屋根の上に上がって、合掌(がっしょう)して、大声で助けを求めたげんじょ、その声もゴーゴーと唸(うな)りをあげる濁流(だくりゅう)に飲まれ、聞(きこ)えなくなってしまったど。
そしてな、大きな波が来て、大事な爺様(じいさま)の骨箱が流され、あわてた婆様(ばあさま)は、泳いで骨箱を掴(つか)もうとしたようだったが、そのまま、猫と一緒に流されて行ってしまったど。