北会津の昔ばなしと伝説 -108/238page
33 さんぼうの助(すけ)とおとふれの話(はなし)
昔、昔あるところに、さんぼうの助(すけ)という狐(きつね)がいたそうだ。ある時位(くらい)をとりに京(きょう)に出かけることになった。ところが一つ心配なことには、自分が肌身離(はだみはな)さずに持っていた大切な巻物(まきもの)があった。考えたすえに、お寺の坊さんに頼んでいくことになった。そしてここには、おとふれという悪い狐(きつね)がいて、必ず何かにばけて、この巻物(まきもの)をとりにくるから、決して渡してはくれるなと、くれぐれも頼んだ。
さんぼうの助(すけ)が旅立ってから、果して数日目に寺の門前に威儀(いぎ)を正した代官が武者揃(むしゃぞろ)えでやってきた。
「こら坊主、そのほう、さんぼうの助(すけ)から巻物をあずかったそうだが、渡さないと容赦(ようしゃ)しないぞ。」
とおどしつけた。