北会津の昔ばなしと伝説 -114/238page
「それは生きた人間を神様に上げることよ」
「おっかねえ 神様だごど」
「『ええか娘が十八になった秋の十月十日の夜白木(しろき)の唐櫃(からひつ)に入れて十二時かっきりに鎮守様(ちんじゅさま)の森に届けんだぞ、忘れんな。さもねいと、この村には火難・水難・餓死とつづいて亡(ほろ)びっつまあぞ』と言って消えてしまったつうだ」
「庄屋様(しょうやさま)は悲しい思いをしながらも七人の娘を次々に人身御供(ひとみごくう)に上げてしまった。さて年月は水のように流れて最後のたった一人残った娘の番になってしまった。なんぼ村のためとは言いながら庄屋(しょうや)夫婦の悩みは一通りではない。娘を中にして今夜は最後の別れだと名残(なのこり)を惜(お)しんでいる時、表の戸口(とぐち)をトントンと叩(たた)く音がする。村人が鎮守(ちんじゅ)の森に送ってくれる