北会津村誌 -064/534pag
洪水は降水量の絶対量できまるものであるが、その降水量を刻々測定して、このために流れこんだ河川が、どの程度水位を増し、これが下流に集水し、洪水波となって、どのぐらいの速度によって伝播してゆくかの、基礎的調査をしておいて洪水警報を発し、少しでも被害を少なくすることが大切である。雨量の絶対量は暴風雨警報などでは概報できても、適確に予報することは容易でない。しかし基礎的調査さえ綿密にしておけば、近年通報は容易になったし、降水量を測って、流域の資料を早く整えれば、洪水波の伝播には時間があるから、洪水度の予告は、相当適確にできる筈である。特に会津地方のように、降水量の絶対値の必ずしも大でない地域で、流域面積が大な場合は、雨量観測所網が完備していれば、下流が洪水になるには数時間を要するから、洪水警報の対策は、必ずしも困難ではない。
現在阿賀川、只見川流域、新潟県を含む阿賀野川全流域に、気象業務法第九条第三項の規定によって、運輸大臣に登録している雨量測定所の数が91ヵ所にのぼっている。内41ヵ所が自記雨量計、他の50は普通計量である。しかしこの布設管理に当っている機関は実に雑多で、気象庁が直接管理するものは自記13、普通9の計22ヵ所、国鉄が普通のもののみ13、東北電力併せて17、東京電力も17、農林省5、福島県7、新潟県一、建設省では9ヵ所で自記観測をしている。
会津地方の雨量観測網の必要性を大にした第一の目的は電源開発条件としての包蔵水力の基礎的調査のためであろうから、この方面には古くからの調査記録もあるらしい。
次は降雨量の何割かは蒸発、地下滲透、その他森林・家屋・屋敷いろいろの貯溜水にとられて川に注ぎこみ、水位を高め、出水となって洪水の形相を呈してくる。この水位を適確に?むことは、堤防の決潰、橋梁の崩壊などを直接予知できる重要な鍵である。