北会津村誌 -063/534pag
杉・松などの老木を並べていぐねとし、雪がこいの細木をくみこむ支い柱ともしておくわけである。
2、洪水予知と豊水標の設置 会津地方、特に盆地中央の北会津村の気候的特色を概観してみると、四季の別は明瞭にきて、冬の雪積季の生活は相当難渋であるが、決して無理というほどでもないし、春が来れば急に気温も上昇し、身体にも快適、作物の生育にも適し、又、気候的災害も、特に顕著な地方とはいい得ない、むしろ変化性に富む、日本の気候帯のうちでも恩恵の厚い地方といわざるを得ないであろう。
しかもなお、洪水による被害が決して少なくないのは、北会津村地内の雨雪量が著大なためというのではなくて、背後に奥会津山地の広く、且つ高度の大きな地域が横たわるためである。奥会津山地は高峻な若い山地をなして裏日本にそびえ立ち、冬季の積雪量の大なのは勿論であるが、山地気候の特色として変化性が多く、時に局部に降水量を大にすることがある。会津地方では、古くから「東風の時は大川(阿賀川)の水が出、西風の時は鶴沼川(宮川)が出る」といいならされている。これは実によく適中することもあって、今さらのように驚くほどである。恐らく阿賀川の集水地域が奥会津東半地域であり、宮川は盆地に直接斜面をもつ博士山・明神岳近傍の水を集めてくるためであろう。
四周が高い山地であるから、盆地底の降水量は、特異な気象現象でも起らない限り、一般には山地よりも少ない。時にフェーン現象などが起って盆地特有の高温になることもあるが、盆地底の標高が既に200メートル前後で、特にはげしい高温記録をもっているわけでもない。
盆地気候の特色は、むしろ背景の深い山地と、その間に低平な盆地をもつ地形的条件と結びつけて考えないと単にその場所の気候的要素の検討だけでは適確に表示できないようである。
特に北会津村の如き洪水地域の水は、村の地域内での雨量測定だけでは解けないということになる。