塩川町勢要覧 -016/030page

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風を熾す人。interview.3

花しょうぶ音頭に夢を受け継いで。

山口 米子さん
山口 米子さん Yoneko Yamaguchi
人情味の有る人柄が塩川のいいところ。みんな打ち解けあって話すことができます。好きな場所は、やはり花しょうぶの咲く御殿場公園ですね。

 日本情緒あふれる中庭に、住む人の趣深さを感じながら玄関を入ると、白地に紫色の花しょうぶが描かれた着物姿の山口さんが、花しょうぶ音頭の練習をしていた。

 山口さんが、花しょうぶ音頭保存会の会長を務めるようになったのには、ちょっとしたいきさつがある。山口さんの嫁ぎ先の義父は生前、町でもよく知られた風流人だった。花しょうぶ祭りで知られ、園内に数万株もの花しょうぶが咲き乱れる御殿場公園。そこに初めて花しょうぶを植えた有志のなかに、山口さんの義父がいた。「会津藩主の行楽地であった御殿場公園は、義父のお気に入りの場所でした。公園に当時の風情を取り戻そうと考えたのでしょう。花しょうぶ音頭も、義父が自ら作詞して、ようやく完成させた曲なんです。それほど真剣に取り組んでいたのを知っていましたから、私も知らないふりはできなくて」。こうして山口さんは、義父の志を受け継ぎ、花しょうぶ音頭の普及に力を注ぐこととなった。

 「でも最初は人数が足りなくて大変でした。あちこちの婦人団体に、必死で声を掛けて回りました」。その熱心さが、人情に厚い塩川町民に伝わったのだろう。次第に会員は増え、現在、花しょうぶ音頭保存会は、 会員九十四人の大きな会へと成長した。「思い出深いのは、数年前、どしゃぶりに見舞われた花しょうぶ祭りです。あまりの雨の強さに実は、踊ろうかやめようかと迷っていたんです。そしたら、皆さんが『踊ろう』と言ってくださって。その時は本当に嬉しかったです。大雨の中、スブ濡れになりながら踊りました。風邪をひいた人もいて、その後、一人一人にお礼とおわびの手紙を出しました」。そんな心づかいが、人を引きつける所以なのかもしれない。

 「夢は、町民あげて花しょうぶ音頭で町中を流し踊ること、これは義父と私の二代にわたる夢なんですよ」と、花のように微笑んだ。

花しょうぶ音頭を練習する保存会のメンバー
花しょうぶ祭りに向けて練習する保存会のメンバー。鮮やかな紫の着物は、本番が待ち遠しそうに見える。

メンバーと談笑する山口さん
練習を終えて、メンバーと談笑する山口さん。花のような笑顔と優しさが保存会を成長させた。


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