高郷の地質と化石 会津化石研究グループ -028/066page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

3)アシカ類(イマゴクリア)の化石

 クジラやカイギュウの化石を産出した地層から、さらにアシカ類の歯と上腕骨の化石も見つかっています(第14図)。上腕骨の化石は2個ですが、そのうちの一つは、やや大きくて上腕骨の稜が発達しています。しかし、いずれもクジラやカイギュウのものではありません。ロサンゼルスの州立博物館には、アシカやアザラシ類など、鰭脚(ききゃく)類の上腕骨化石や骨の標本がたくさん保管されています。1991年8月、ロサンゼルス州立博物館を訪ね、そこに勤めるバーンズ博士の協力を得て、それらの標本と高郷の上腕骨化石を比較することができました。その結果、大きさや形の点でセイウチの先祖、イマゴタリアのものに良く似ていることがわかりました。イマゴタリアの化石は日本からいくつか産出していますが、上腕骨の化石は珍しいものです。

 一方、歯の化石は切歯、犬歯、臼歯が、ほぼU字列をつくって並び、その歯の突き出る方向や歯のすりへり面の傾き、そして岩石に残っている頭のうしろの部分の骨の形からみて、上顎の歯に違いありません。また、犬歯が比較的大きく発達していることから、明かに食肉類に近いものです。さらに臼歯の特徴は鰭脚類を示しています。この化石もロサンゼルス州立博物館のものと比較した結果、犬歯の大きさや曲がり方などの点で、イマゴタリアというセイウチの先祖の化石動物と良く似ています。

 セイウチの進化では、犬歯はもともと、ほかの切歯や臼歯とともにU字列に並んでいましたが、だんだんと外側にはみだし、大きな牙に発達するように進化しました。イマゴタリアは、その犬歯が外側にはみだし始めたころの動物で、高郷で見つかった歯の化石もその特徴が良く認められます。今後は、高郷のイマゴタリアがどんな種類のものか、さらに詳しい研究が期待されます。いずれにしても、当時の高郷の海にはカイギユウヤクジラばかりでなく、セイウチ類の先祖(イマゴタリア)もいたことになります。

a、上腕骨
a、上腕骨

b、もう一つの上腕骨
b、もう一つの上腕骨

c、上顎の歯、切歯・犬歯・臼歯
c、上顎の歯、切歯・犬歯・臼歯が見える。


    第14図 セイウチの先祖 (イマゴタリアの化石、a、b、cのスケールはいずれも5cm)

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は高郷村に帰属します。
高郷村の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。