高郷の地質と化石 会津化石研究グループ -038/066page
3. 植物化石
次に藤峠層から産する植物化石を紹介します。
(1)ケイソウの化石
藤峠層には、植物の化石を含む地層が何枚も挟まれています。その中に薄い茶色のケイソウ土(単細胞植物のケイソウがいっぱい入っている土)層も含まれています。ケイソウは、肉眼では見えない小さい植物で、淡水や海水に棲んでいます。藤峠層のケイソウ土を分析した結果、淡水性のケイソウを含み、特にメロシラのなかま(第18図)が圧倒的に多く、種類やその組成からみて、当時の環境は「湖の中心部」と考えられます。
(2)大型の植物化石
ブナ、ミズナラ、カエデ、ヒシなどの化石が見つかりますが、藤峠層が堆積した鮮新世頃の高郷村付近に分布・自生していたと考えられる植物を綴ってみます。
化石として最も多く産出しているのはブナの葉です。会津方部で現在の山地帯の極相林(きょくそうりん)(植物遷移の結果安定期に達した森林)として大面積に分布していたが、昔から多く伐採利用され、終戦後は合板材、パルプ用材などに多量に伐採され、現在ではブナの大きな自生林は、尾瀬付近か飯豊山麓などにしか見られなくなりました。
会津の山間部の自然林にはミズナラ等に混じって相当量のブナが生育し、5月始めに黄緑色の新葉を展開し、10月末には黄褐色になり落葉します。樹皮は白っぽく、葉は菱形卵形(ひしがたらんけい)で長さ4〜9cm、緑は波状の鈍歯(どんし)で、側脈は7〜11対あります。秋期に結実する堅果(けんか)はクマ、リス、野鼠(やそ)など獣類の食料となる。南会津方面では方言でコノミと呼び、縄文時代以前より採集され、 食べられてきたようです。