あいづばんげ町勢要覧 -015/034page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

に定着していったと思われる。「こづ ゆ」を「煮肴」と呼び、献立の中で 魚の役割を果たしていたということ は、生魚が手に入りにくかった食料 事情を物語っていて興味深い。

 「ご招待を受けてご馳走になって いる時でも、こづゆだけは何杯いた だいても失礼にならないですよ−」。 この地方ではよく知られた風習であ る。新鮮な素材を煮込んだ素朴な味 は、飽きのこないさっばりとした味 付けになっていて、確かに何杯でも いただけるおいしさ。祝いの席に欠 かせないお酒にもよく合い、この風 習はそんなところからもきているの かな、とも思う。

 興味深い風習はそれだけではな い。作り方にもおもしろいしきたり が残っている。それは「こづゆに使 う材料の数は必ず奇数にすること」 である。これは婚礼等の席に出すこ とから、「偶数=割り切れる」「割り 切れる=別れる、切れる」が不吉なこ とからきているものと考えられる。 「こづゆ」につづく郷土料理をあげる と、にしんの山椒漬、棒鱈の煮物、 エゴ練りなどがあるが、これらの一 部は、会津藩が京都守護職時代に京 都から伝わったものといわれてい る。材料や料理の取り合わせは京都 料理に近く、会津の新鮮な素材と融 合して独特の郷土料理になったもの と考えられている。

 「昔は婚礼とかお正月、お祭りに限 らず、なにか祝 い事があると必 ずこづゆを作っ て食べたもんだ けどなあ」。なん でもすぐに手に 入るような時代 になるにつれ て、伝統の味も 少しずつ忘れら れてゆくのかも 知れない。

 しかし、会津 坂下には今も、 藩政時代から受 けつがれてきた 素朴な味覚が、 脈々と生きつづ けている。

 古来、会津の 庶民は、常に冷 害や凶作への備 えを忘れず、食糧をむだなくていね いに扱い、やりくりして食糧の備蓄 をはかってきた。

 行事食、晴れ食にもその伝統は反 映された。その根底にあるものは質 実の心。そんな伝統を受け継ぐ味が、 この「こづゆ」なのである。

こづゆ作り

こづゆ・1

こづゆ・2

お招きを受けた時でも、こづゆだけは
何杯いただいても失礼にあたらないんですよ。

会津坂下に 生きる太陽たち


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は会津坂下町に帰属します。
会津坂下町の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。