カラムシ資料集その1-003/028page

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又移し種ゆべき畦にも水を澆ぎ、苗をへらを以て土を付けてほりおこし、四五寸ばかり間を置きてうへ、水をそゝぎ、有付けて後、中をさいさい熊手にてかきさらへ、雨なくば五六日に一度づゝも水を澆ぐべし。かくのごとくして廿日の後は十日に一度そゝぐべし。十月の後に至りては、牛馬の生糞をおほふ事厚さ一尺許り。
かやうにしをきて又移しうる畠は、屋敷内は猶よし。随分肥えたる性よき地を深く耕し、埋糞を力の及ぶほど多くして秋からさらし、熟しをきたるに、冬より春に至り、猶も細かなる糞を用いてよくよく糞し、春の始移し栽ゆべし。芽の少し出でんとするを上時とし、め立ち少し出でたるを中時とす。苗ながく成りたるを下時とするなり。
うゆる法通りを直に區をほり、區と區の間凡三尺ばかり、區の中に三四本又は五六本にてもうへ、土を厚くおほい、水を入れて沈め置き、牛馬糞などを多くをく事はいか程にても多き程よし。若し又夏秋の間移しうゆるならば、細雨の時根をしめし、践みかため土を付けて掘取りてうゆべし。
又年久しき吉根を移すは、斧を以て切りわり、かぶの長さ三四寸許にして是も區の分量は右に同じ。まちごとに二三本横にねさせうゆべし。區は四角にして平地より少し高く、ぐのめにならびあるゆへ、碁盤のならびたる様になるべし。土をおほひ、水をそゝぎ、沈めうゆる事もわかき苗と同じ。是も又有付きて後も折々水を澆ぐべし。苗高くなりては細々中うちし、呈せば水をそそぐべし。冬春の手入糞しも右に同じ。又二三日路ある遠き所より取りよせてうゆる事は、根の痛まざる様に細根を多く付けてわきよりほりおこし、莚などにて包みかゝげ、風日のとをさざる様すれば枯るゝ事なし。秋冬より糞し手入れをよくして、初年長さ一尺許、是は則ちきりそぎて捨つべし。二度めにながくのびたるをみて、則ち刈取りてはぎ用ゆべし。冬になりて牛馬糞をおほひ、春はらひのけ、芸り等の手入れ、何れも前に同じ。年々かくのごとくして、五七年も過れば根大小しげく、いや重りて痛み莖多くは立たぬ物なり。本かぶをば其まゝ置き、新株を分取りてうゆる事前のごとし。
毎年三度づゝは何れも切るべし。きる時根の傍の小きわかめ立は、土を出づる事五分ばかりもあるを、損じ痛まぬやうにしてをき、刈取りては是をよく生ふし立つべし。長きを刈取るゆへに、精がわきの芽立に入りて頓てさかへ長くなるべし。麻苧を刈るには此め立のほどを見はからひて、小芽のいまだ長くならぬ先にきる物なり。小芽長くなりて刈れば痛みてさかへかぬるなり。大方五月初めより八月半まで、三度刈るものなり。中たびのながき麻が性もつよく色もよし。刈りたをしたる麻を竹刀又は鐵刀にても、梢より葉をうちはらひ、たばね取りて水に漬けぬらし、手にて皮をはぎ、小刀にて其白き皮を削れば上皮はをのづからのく物なり。是をたばね小束にして屋の上にかけ、夜露をとり書さらし、かくのごとくする事五七日なれば、其麻自ら白く、きれいになる物なり。もし其中雨天ならば家の丙風の通る所にかけをくべし。雨にあへば黒くなりて用に立たず。凡かたびらには是にまさる物なし。三草の一つにて、人家多少によらず必ず作るべし。よくさかへぬれば、長さは七八尺、楮の葉に似て面は青く、裏は白し。白き毛ありて夏秋の間細き穂を出す。浅黄色の花咲くなり。よく實りて後種子を収むべし。但したねを取るをば二番刈して其まゝ置くべし。肥良の地に是をうへ付け、さかへぬれば其利過分なり。又此葉をもみ、或は根をくだきすりて癖疸にぬれば、膿きえ去りて、よくいゆる名譽の薬と記し置けり。
只見町資料 産業 一部抜粋
新編会津風土記は享和(一七〇一〜一七〇三年)年代に、各村組より調査資料を提出して、藩がそれを整理記述したものであるが、これに書かれている産業には次のものがある。和泉田組=麻・きのこ・養蚕・川魚
黒谷組=薪・莚・麻布・養蚕・川魚
大塩組=薪・養蚕・川魚
この他鉱産物=銅・鉛が多く、幕末には蚕種子が輸出する程の量を産出した。

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