カラムシ資料集その1-015/028page
○越後縮
ちゝみの文字普通の俗用にしたがふ又しゝみと訓べきをもちゝみと俗にならふ
縮は越後の名産にして普く世の知る処なれど、他国の人は越後一国の産物とおもふめれど、さにあらず、我住魚沼郡一郡にかぎれる産物也。他所に出るもあれど僅にして、其品魚沼には比しがたし。そもそも縮と唱ふるは近来の事にて、むかしは此国にても布とのみいへり。布は紵にて織る物の総名なればなるべし。(後略)
○縮の種類
(前略)
▲白縮は堀の内町在の村々これを堀の内組といふ 又浦佐組小出嶋組の村々 ▲模様るゐ或は飛白いはゆる藍錆といふは塩沢組の村々 ▲藍縷は六日町組の村々 ▲紅桔梗縷のるゐは小千谷組の村々 ▲浅黄繊のるゐは十日町組の村々也。また紺の弁慶縞は高柳郷にかぎれり。(中略) 縮は右村里の婦女らが雪中に籠り居る間の手業也。およそは来年売べきちゝみをことしの十月より糸をうみはじめて次の年二月なかばに晒しをはる。(後略)
○紵
縮に用ふる紵は、奥弱会津出羽最上の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵といふもの極品也、また米沢の撰紵と称するも上品也。越後の紵商人かの国々にいたりて紵をもとめて国に売る、紵を此国にてもそといふは古言也。麻を古言にそといひしは紵麻のるゐ也。麻も紵も字義はおなじく布に織べき料の糸をいふ也。紵を苧に作るは俗也と字書に見えたり。
○紵績
(前略)
中品以上に用ふるを績にはうむ所の座を定めおき、体を正しくなし呼吸につれて手を動せて為作をなす。定座に居らず、仮に居て其為作をなせば、おのづから心鎮ずして糸に太細いできて用にたちがたし。常並の人の紵を績には唾液を用ふれども、ちゝみの紵績には茶碗やうの物に水をたくはひてこれをもちふ。事毎に盥ひ座を清めてこれをなすなり。
○縷綸
(前略)
そもそもうみはじむるよりおりをはるまでの手作のすべて雪中に在、上品に用ふる処の毛よりも細き糸を綴兆舒疾してあつかふ事、雪中に籠り居る天然の湿気を得ざれば為し難し。湿気を失へば糸折る事あり。をれしところ力よわり断る事あり、是故に上品の糸をあつかふ所は強き火気を近付ず、時により織るに後で二月の半にいたり、暖気を得て雪中の湿気薄き時は大なる鉢やうの物に雪を盛て機の前に置、その湿気をかりて織る事もあり。これらの事に付て熟思に、絹を織には蚕の糸ゆゑ■熱を好、布を織には麻の糸ゆゑ明冷を好む。(中略)
件の如く雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒ぎ、雪上に■す。雪ありて縮あり、されば越後縮は雪と人と気力相半して名産の名あり。魚沼郡の雪は縮の親といふべし。蓋し薄雪の地に布の名産あるよしは糸の作りによる事也。越後縮に比べて知るべし。
○織婦
(前略)
縮の糸四十■を一升といふ。上々のちゝみは経糸二十升より二十三升にも至る。但し筬には二すぢづゝ通すゆゑ、一升の糸は八十■也。布幅四方に緯糸もこれに随ふて併ざれ地をなさず。よこ糸は猶多からんか、たしかにはさとさず されば僅に一尺あまりを織るにも九百二十度手を動ず。こゝを以て一端を二丈七尺としても二万四千四百八十四手をはたらかせざれば端をなさ
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