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佛國政府に於ても、一八八八年剥引器械の懸賞募集をなせしに、應募するものDe landsheer machine,Barvier式等十九式、此に於て一八八九年巴里に於て審査し、De landsheer式一等に當選せしも、未だ不備の點多きを以て、同年更に再募集し、一八九一年應募器械を審査して、遂にFaure式剥引器械の發明を得るに至れり。本機は當時佛國に於て上下の歡迎賞讃を博し、好評請々たるものなりしが、未だ不備不完全の鮎少なからざりしを以て、その後現今に至る迄幾多の改良を経て、遂に現今のフォール式器械となり、歐米に好評を博し、現今世界に於ける剥引器械中最も優秀なるものなり。之れを模放改良せる剥引器械又少からず、英國のAndreuw式、我が國の石井式機械之れに屬す、斯の如く佛國に於て漸く漿勵の効果を得たる他方に於て、米國にても、國家的漿勵の結果、一八八三年以来、S.Ballison式器械を初めとして、その考案せらるゝもの積出するに至れり。然れども總て不完の域を脱せざりしが、一九〇七年に至り、現今米國に於て一般の好評を受くるSchlichten式の發明あり。未だ完備せりと云ふにあらざれども、剥引器械の發明に於て成功の域に進めり、米國の漿勵と共にメキシコに於ても、一八九二年Veracruz州に於て米政府が剥引器械の漿勵をなすに至りしも、遂に實績を擧ぐる事能はざりき。その外英國に於ても、國家的に剥引器械の考案を督勵諸種の器械の考案あり、殊に近世に至りては、フォール式に改良を加へ、成績良好なるAndrewe式の發明あり、獨逸にてはAnquilles式等の發明せらるゝありて、成績良好なる如きも未だ不備の點を有するものゝ如し。
是等要するに現今最も歐米各國の好評を博するは、フォール式にして、英國にてはAndrewe式、獨逸にてはanquilles、米國にてはSchlichtenを用ふるものゝ如し。
我が國に於ても、苧麻栽培興業の勃興を計らんとするに於ては、先づ剥引器械を發明考案するにありとの聲喧しく、遂に大正元年頃大阪市西區九條下ノ町石井鐵工所主人石井友次郎氏は、佛國製フォール式剥引器械を研究して、多少の折衷を加へ、之れを苧麻洗浄剥引器械と命名して、専賣特許を得、フォール式器械に一段の改良を加へたるも、未だ一般の使用を得るに至らず。
第十八章 人工剥皮法と機械力との優劣比較
苧麻に於ける人手剥皮法は前記の如く其附属器具も小資金にて出來上り、且つ操作至って簡便なれども、是は小農組織に伴ふ小規模作業にして、大農場は不適當なるのみならず、一見經済的に似て事實上極めて不經済の一陋習たるを免れ難し。而して其不經済の點左の數様に別だるゝなり。
即ち一家族中にて行ふには其剥皮仕上げに多日を費し總收穫を短期間に終へ能はざるを以て、苧麻の發育上次回の收穫に大影響を及ぼすの恐あり。即ち前回の收穫期不揃ひなる時は、苧莖の成熟隨つて不揃ひとなる恐れあり。又大農場にて人て剥皮法を行ふ時は日傭人夫にしても、請負仕上にしても夥多の勞力人員を要し、側へば一區十甲以上の苧園に對しては、其繊維採收費莫大にして、收支計算不相償に至るの恐れあり。若し機械力に由る時は、僅少の人夫にて、短日間に仕上げ得るの便益あり。
若し一區數百甲の大苧園に於て、短期日間中に一同の收穫採絲莖を仕上げんと欲するには、佛國フォール式第三号剥皮機械を使用するを適策と認むる處にして、其の能力は即ち前述の如く。
甲種普通型は、一日十時間作業にして、苧麻生莖一萬七千八百英斤を消費し、此繊維歩留は六百二十斤。
乙種最大型は、同十時間作業にして、回生莖二萬六千五百英斤を消費し、此繊維歩留は九百二十五英斤。
と云ふ割合にして、甲は約八馬力(インジン)乙は十二馬力(インジン)を要す。但し此機械は尚ほ未だ日本に渡来せず、嘗て使用したることはなきも完全に近き機械と認めらるゝ處なり。
右は百甲以上の大農場に對する剥皮機械は前述の如くフォール式第三号甲乙兩品の中を用ふるを有利と認む處なれども、此機械は尚未だ我が内地に渡來せず、且つ使用したることなきもの故、早晩佛国より現品を輸致して、一應の試運轉を經たる上ならでは、營利的工場には直ちに用ひ難きものなり。故に苧麻の大規模栽培に從事する者は、此機械を購入して試運轉を兼ねつゝ、
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