自然観察ガイドブック 五十人山の自然 -011/032page

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ところで、気候的極相林に関して「中間温帯林」 という新しい考えが提唱されている。これは暖温帯 林であるシイ・カシ林と冷温帯林であるブナ林との 間に、コナラが「中間温帯林」をつくっているので はないかというものである。この理由はいくつかあ る。阿武隈山地下部に見られるイヌブナ林も比較的 傾斜の急なところに成立しており、地形的な極相林 であると考えられること。コナラは、春になって新 しい葉を広げたあとにも芽を残し、霜害などで最初 の葉が死んでも次の葉を広げることができる機構を もっていることなどである。コナラは二次林を構成 する代表的な樹種であるが、気候的極相林としての コナラ林の成立を裏づけている。


五十人山と阿武隈高原中部県立自然公園

五十人山は、双葉郡葛尾村と田村郡都路村との境 に位置する標高883.1mの山である。山とはいえ決し て高くはなく、周囲には同じような高さの山が連な り、全体としてなだらかな丘陵地帯となっている。 阿武隈山地全体が比較的起源が古く、風化や浸食を 受けて準平原となっているためである。阿武隈高原 中部県立自然公園は、五十人山のほか、アカシデや ケヤキを混じえたモミ林がうっそうと茂る高瀬川渓 谷、1000mを越す日山や大滝根山、モリアオガエル の繁殖地で有名な平伏沼、仙台平の石灰岩地帯など いくつかの地域に分けられている。また、あぶくま 洞や天然記念物の入水鍾乳洞には、毎年多くの観光 客が訪れる。

ハクウンボク(エゴノキ科)
ハクウンボク(エゴノキ科)
6月上旬に純白の花を咲かせる。


五十人山の植物

葛尾村は、福島県内有数の馬産地となっており、 かつての軍馬や農耕馬飼育の伝統が現在の競走馬の 飼育に生かされている。また、都路村とともに、十 数年前までは養蚕もさかんに行なわれていたが、た び重なる春先の霜害と手不足のために畜産や葉タバ


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