自然観察ガイドブック 五十人山の自然 -017/032page

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ベニバナニシキウツギ(スイカズラ科)
ベニバナニシキウツギ(スイカズラ科)

 アカシデの多い林を通り、コナラやリョウブの低木が見られるようになるとまもなくアカマツの植林地となる。林道は沢沿いに通っており、6月上旬にはベニバナシキウツギが真紅の花を咲かせる。新築された葛尾中学校の前を通れば出発地点の落合に出る。

 五十人山へは都路村の持遠田からも登ることができる。広い登山道が頂上の鞍部まで続いており、途中には水場もあって利用する人も多い。しかし、植物を中心としてみると、草本層にバイケイソウを密生するミズナラ林があるほかは、葛尾村側のものとほとんど変わりがない。

姿を消していく植物たち

 五十人山は「つつじの山」としても有名であると同時に「すずらんの咲く山」としても知られている。 しかし、残念なことに、近年の山野草ブームはこの山のスズランを激減させている。根こそぎ掘られたスズランが道路に捨てられていたこともあったそうである。このようなことはスズランだけに限ったことではない。地元の人の話では、葛尾村の広谷地地区にはミズバショウが咲き、オウレンが繁茂していたそううである。また、五十人山一帯ではカザグルマも見られたという。現在ではこれらの植物を確認することができない。

 植物は、そこにあるからこそ美しい花を咲かせることができるのである。自然を愛する人は自然を傷つけたり汚したりしない。そして本当に植物を愛する人は、植物を採ったりしないものである。五十人山は小さな山であるが、そこには広い阿武隈山地を代表するブナ―スズタケ林があり、産地の限られた植物も生息している。このままの姿、より自然な姿で後の人に受け継ぐことが、私たち現在生きている人間の責務であることを忘れてはならない。


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葛尾村の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。