自然観察ガイドブック 五十人山の自然 -019/032page
葛尾村無線中継所からみる五十人山周辺
周囲の山々も全体としてなだらかで、
山の高さにあまり差がない山頂からの眺めはすばらしい。まわりの山々をみわたしてみると、近い山こそ頂がとがって独立の山にみえるものもあるが、遠望すると、阿武隈山地全体は、山々が連なって大きな台地状の平原を形成していることがわかる。
この様子は、浜通りの海岸地方や中通りの吾妻、安達太良連峰からも明らかに認めることができる。
阿武隈山地はかつて、広大な平坦面がつらなる台地(準平原)であった。詳しい時代はわからないが、阿武隈山地全体を形成しているカコウ岩が、地下深部でできて以降、大規模な地盤の隆起が起こったためである。
その後、長い時の流れとともに、雨が流れに、流れが川となって浸食が起こり、谷が刻まれ、谷と谷の間は両方または四方から削られて、かつての連続した大地は、尾根または独立した山(これを「残丘」(ざんきゅう)という。)となった。河川の浸食は、水の流れるふもとが激しく、山頂部はおそい。したがって山頂部の標高は、どの山も似たりよったりの高さになる。また一度できた斜面は、徐々に崩れて移動し、すそ野の長いスロープを形づくる。これが現在の阿武隈山地の姿である。
近くに見える竜子山や鎌倉岳は、四方からの侵食が激しかったために平坦な山頂は残らなかったもので あり、五十人山はそれよりわずかにおそいため、比較的平坦な形が残っているものである。かつての