自然観察ガイドブック曰山の自然 -013/031page
13 曰山の植物ミズナラ、イタヤカエデ、ウダイカンバ、ア カマツなども混じる。下生えにはクマイザサ、 ヤマツツジなどが多い。これら広葉樹の林は、 春には新緑の新鮮さに輝き、夏は涼しい日か げをつくり、秋は紅葉に彩られて、路行く人 を楽しませてくれる。野生のカスミザクラが 咲くのは5月中旬で、下旬にはヤマツツジが 花盛りになる。
やがて林は切れ、頂上のヤマツツジ群に行 きあたって、路は二手に分れる。右の路はヤ マツツジの中を抜けて直接芝原に達する。左 を行くと路はやや下り、樹林の中へ入って行 く。この樹林の中の岩かげに御神水がある。 葛尾の三匹獅子の一行はここで身を浄め、神 域に入ることになる。
ここの樹林はブナが多く、他にクマシデ、 イヌシデ、ミズナラなどを混じえる。林床に はチマキザサが成長し、ヤマツツジ、ヤマモ ミジ、ウラジロノキなども見られる。
御神水をすぎて、急な斜面を登ったところ に、大きな花こう岩の露頭がある。この下に 大きな空隙があり、そこは夏でもひんやりと 冷い。土地の人々はこの空隙を御室と呼び、 蚕種の保存に用いたという。岩肌に文化5年 9月の刻字がある。文化5年は1808年である。 この岩の下を左にまいて、路は頂上に出る。 葛尾の社は、山頂芝原の南端に東南向きに建 っている。