大熊町民話シリーズ第1号 民話 苦麻川-008/055page
夕方どこかに逃げて行ってしまったと。
その日の真夜中頃、里ににわかに大風(おおかぜ)が吹いたと思ったら滝の沢の方角に大木が倒れるような地響(じしび)きがしたので、朝早く滝に行って見たら大杉が滝つぼに倒れこんで、冷たい水にうたれていたので、これはきっと神木なんだという事になってなあ、みんなで大杉のあった丘に祠(ほこら)を建てゝ木の神、水の神、山の神を祭ったのだと。」
「酒つくりの名人はなあ。」
「それからあと、酒を仕込んでも仕込んでも失敗するもんで、毎晩毎晩滝つぼにでかけては祠にお詔りをして七日七夜の水垢をとっていのったら、やっと元通りの酒が出るようになったとよ。」
《第四話》
飛付観音物語
野上川をさかのぼると、うねりくねった清流が、数丈の断崖を映して流れている景勝がありま