大熊町民話シリーズ第1号 民話 苦麻川-016/055page

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しょう。里には見なれない、七〜八才のこどもがニコニコと笑顔を見せて、田の畦(あぜ)にたっていました。

あまりに小さな子どもなので、お爺さんが驚き顔に、「お前さんは鼻どりをした事があるのかい。」と聞きますと、こどもは、「やった事はないけど出来るよ。」と云いながら、ジャブジャブと田の中に入って馬にとりつきました。

ところがどうでしょう。馬はさも嬉しそうに子どもの鼻どりのままに、動きだしました。お爺さんはびっくりしながらも喜んで一生懸命(いっしょうけんめい)にはたらきましたので、仕事は大変にはかどりました。

しばらくたって、腹痛のおさまったお婆さんが急いで田んぼに出て来ました。
これを見たこどもは、フイと鼻どりをやめてスタスタと南の丘の方に歩き去ってしまいました。

「今、七つか、八つ位の子どもに会わなかったかい。」
とお爺さんがききました。

「誰にも会わなかっただよ。」とお婆さんが答えました。

お爺さんは、お婆さんに、さっきからの事を話して、「お婆さんよ、お前からもあの子どもにお礼を云っておくれよ。」と云いましたので、お婆さんは急いで子どもの姿(すがた)をさがして南の丘の地蔵堂の森で追いつきました。


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