大熊町民話シリーズ第1号 民話 苦麻川-017/055page

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はなどり地蔵

ところが驚いた事に、子どもはスイッとお堂の中に入ってしまいました。びっくりしたお婆さんは、恐る恐るお堂の中をのぞきました。

地蔵様もよほどあわてたとみえて、両膝(りょうひざ)を組む暇がないので片膝(かたひざ)は立膝(たてひざ)にしたまゝで坐っていました。組み合せた脚からはポトリ、ポトリと水が垂れおち、膝から下は泥水にぬれていました。

それからのち、里の人達は地蔵様を、鼻どり地蔵と呼んで崇(あが)めるようになりました。そして地蔵様が化身して鼻どりを手助けした大字熊字本町地内の田を地蔵仏供(じぞうぶつく)とよんで毎秋の実り物を供えるようになりました。長い昭和の動乱が終って、人々は神も仏も忘れ去ってしまいました。

地蔵様も、里の子どもたちのお供をして熊川の川辺で水泳ぎをする日が続いていました。そしてまた丘の地蔵堂に帰る事が出来ました。

地蔵様は今もなお、半迦趺坐のまゝお堂の中に鎮まっています。

本命は延命地蔵様といいます。


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