大熊町民話シリーズ第1号 民話 苦麻川-022/055page

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親兵衛爺さんはこう云って口を結びました。

 

 《第十話》

  蛇ばみが淵

むかし。

野上の舘沢(たてさわ)の台の上に片倉主水正(かたくらもんどのしょう)という豪族が住んでいました。

野上川が、ぐるりと舘(たて)をとりまき、台の中腹には涸れることのない清水がこんこんと湧き出ており、台の後ろはけわしい阿武隈の山につらなって自然の堅城をかたづくっていました。

忙がしかった田植えも終わって、稲田が緑濃生(みどりこく)づいて来た頃の事でした。里の人達は毎晩毎晩田の水が涸れつくしているのを知ってびっくりしました。

三日たち、五日、十日とたつうちに稲田は縦横(たてよこ)にひびがわれ、緑の稲は黄褐色に変って来ました。

里人たちは葉山嶽(はやまんだけ)に集まっては雨ごいの祈りを続けましたが、さっぱりききめがあらわれませ


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