大熊町民話シリーズ第1号 民話 苦麻川-040/055page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

やがて野山の草木が一面に色づき、一葉二葉(ひとはふたは)と散って行く秋がくる頃お花さん達の焼畑(やきはた)にはびっくりするほどの薯(いも)が実りました。

そんなある日の事、お代官様が開拓の様子を見に里を訪れて、お花さんの家が昼食の宿にきめられました。

お花さんは、かいがいしく襷をかけ、へっつい(飯をたくかまど)で御飯(ごはん)をたきあげ、やがてたきあがった御飯をへらでかきまぜながらおひつに移しはじめました。

とたんになんという神様のいたずらでしょう。ブウッ、と時ならぬおならの音がお花さんのお尻から飛び出して終いました。

アァッ!蒼くなり赤くなったお花さんは、つと立ち上るなり家を飛び出して終いました。突然の出来事に一座の人々はあわておどろきましたが、お代官様は何も知らないふりをしておとがめ一ツありませんでした。

人々は手をわけてほうぼうたずねまわりましたが、お花さんの消息はさっぱりわかりません。

やがて再び春が去り、夏が行き、実りの秋が来て、お花さんが姿を消してからやがて一年目の日が訪れました。

その日家の人たちは、裏山の萩の花がひっそりと咲きほこった根元に、襷をかけた姿のまゝで


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は大熊町に帰属します。
大熊町の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。