大熊町民話シリーズ第1号 民話 苦麻川-043/055page

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萩は、田(た)んぼからあがり乳を飲ませようとして大木の根元に腰をおろし、背中の子どもを抱きおろしました。

ところが、背中から抱きおろした子どもは首をだらりとたれたまますでに息絶えていました。

気ちがいの様になったお萩は、子どもの名を呼びながら田の水を顔に吹きかけてゆり動かしましたが、息をふきかえしません。

思案(しあん)にくれたお萩は、息絶えた子どもを再び背にして、とぼとぼと海岸に向かって歩き出しましたが、やがて四十米あまりの断崖からさかまく太平洋に身を投げました。

これからあと一反田附近の水源はかれはてて、二度と水田として復活しませんでした。

 

 《第十九話》

  鶴が森・亀が森

むかし。

小入野の里(さと)は海の水が細長く入りこんで、人々は周囲の高台に四〜五軒ずつの家をつくり貝(かい)や


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