大熊町民話シリーズ第2号 民話 野がみの里 - 004/056page
この話を聞いて大へん気の毒に思いみんなに話しました。
「私にも手伝わせてください。私は全智全能をしぼって雨ごいをします。皆さんの悲しみをみて通りすぎるわけには参りません。」
みんなは喜びました。そしてその晩また「かじや川原」に集まって雨ごいのお祈りをしました。
昌玄坊は高らかに天にとどけよとばかり雨乞いのお経をあげました。しかし空は晴れ渡っています。人々は坊主にだまされたなと思っている内に、日隠山の方にいなびかりが見えました。そして雷の音も聞こえてきました。
人々は霊験あらたかなり、とみんなで天にとどけよとばかりにお祈りをつづけました。やがて雨が降り出し、熊川にはどろ水が流れてきました。人々は一人としてひきあげようとはしません。そのすさまじい雷鳴雷雨の中でお祈りがつづけられました。
やがて昌玄坊の合図でみんなは家に帰りました。どぶねずみのようにぬれていてもうれしさで一杯でした。
あくる日、昌玄坊はみんなに感謝されながら北の方に旅たちました。村人たちに請われるままに残していった一冊のお経を葬って築いた塚があります。昌玄塚といって、熊町幼稚園のお庭の南端にひそかにたたずんで「かじや川原」を見下しています。